国家公務員試験(総合職・大卒)

【過去問解説】2019年国家公務員採用総合職試験(大卒)森林・自然環境(多肢選択式)試験問題【No.8】

2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。

問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。

なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。

これは、必須問題13題のうちの8問目の問題です。

タップできる目次
  1. 問題
  2. 解説

問題

気候変動枠組条約*1に基づく地球温暖化対策に関する記述として最も妥当なのはどれか。

  1. 1992年に,大気中の温室効果ガス濃度を低減させることを目的に気候変動枠組条約が採択され,国際的な取組を進めることが合意された。この条約では,全ての締約国に対し,主要な温室効果ガスである二酸化炭素の排出を2000年までに1990年水準に戻すよう努力することが求められた。
  2. 1997年に採択された京都議定書において,我が国は,2008年から2012年までの第1約束期間の温室効果ガスの排出を,同議定書の採択年と比較して6%削減することが定められた。2005年には,この目標を達成するための具体的な施策などを明らかにした地球温暖化対策計画が国により策定された。
  3. 2013年から2020年までの京都議定書の第2約束期間においては,温室効果ガスの排出量が増大している新興の途上国も,削減目標を設定することが課せられた。我が国も同期間に課せられた削減目標の達成に向け,引き続き地球温暖化対策に取り組むこととしている。
  4. IPCC*2第5次評価報告書によれば,全世界で気候変動対策を徹底的に行った場合のシナリオを除き,21世紀末の世界の平均気温は上昇すると予測されている。このことを踏まえ,2015年に,我が国は特に自然生態系への被害を最小化するため,「気候変動の影響への適応計画」を策定した。
  5. 2015年に,2020年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みであるパリ協定が採択され,全ての締約国が削減目標を5年ごとに提出・更新することなどが義務付けられた。我が国は,2030年度において,温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減するとの中期目標を設定している。

*1 気候変動に関する国際連合枠組条約

*2 Intergovernmental Panel on Climate Change (気候変動に関する政府間パネル)

解説

①の文章ですが、

1992年にブラジルで開催された国連環境開発会議(United Nations Conference on Environment and Development, UNCED)、いわゆる地球サミット(the Earth Summit)では、各国は自国の資源の開発主権を有するとともに他国の環境に損害を与えないようにする責任があること、地球環境悪化に関しては、先進国と途上国とでは、共通だが差異のある責任(common but differentiated responsibilities)を有することなどの環境と開発に関する基本原則を述べた「リオ宣言(Rio Declaration on Environment and Development)」、持続可能な開発に向けた実施計画である「アジェンダ21(Agenda 21)」等が合意されました。(このアジェンダ21の実施状況をフォローアップするため、1993年に、経済社会理事会の下に「持続可能な開発委員会(Commission on Sustainable Development, CSD)」が設置されました。)

森林関係では初めての世界的合意である「森林原則声明(Forest Principles)」が採択されるとともに、アジェンダ21には第11章に森林減少対策が盛り込まれました。森林原則声明では、現在及び将来の世代にわたって、社会的、経済的、文化的及び精神的なニーズに応えられるよう持続可能な経営が行われるべきこと、各国や国際社会が取り組むべきことなどが謳われました。

この地球サミットでは、既に交渉が妥結し採択されていた「気候変動枠組条約」、「生物多様性条約」が署名のために開放されたのとは対照的に、森林に関しては、自国の資源に対する利用制限をおそれた途上国の反対が強く、法的拘束力を有する森林条約等を交渉するに至らなかったことから、それに代わるものとして、法的拘束力のない「森林原則声明」が採択された経緯があります。

林野庁HP「森林・林業分野の国際的取組」より

とあり、全ての締約国に対し,主要な温室効果ガスである二酸化炭素の排出を2000年までに1990年水準に戻すよう努力することは求められていませんので、間違いです。

②の文章ですが、

平成9(1997)年には、京都市で、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」が開催され、条約の目的をより実効的に達成するための枠組みとして、先進国の温室効果ガスの排出削減目標等を定める「京都議定書」が採択された。

「京都議定書」では、2008年から2012年までの5年間を「第1約束期間」としており、この期間において我が国は基準年(1990年)比6%の削減目標を達成し、このうち森林吸収量については、目標であった3.8%分を確保した。

平成29年度 森林・林業白書「第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(2)」より

とあり、同議定書の採択年と比較して6%削減することは定められていませんので、間違いです。

③の文章ですが、

また、2013年から2020年までの8年間を「第2約束期間」としており、2011年に開催された「気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17(*143))」では、同期間における各国の森林経営活動による吸収量の算入上限値を1990年総排出量の3.5%とすること、国内の森林から搬出された後の木材(伐採木材製品(HWP(*144)))における炭素固定量を評価し、炭素蓄積の変化量を各国の温室効果ガス吸収量又は排出量として計上することなどが合意されている(*145)。

我が国は、第2約束期間においては「京都議定書」の目標を設定していないが、COP16で採択されたカンクン合意に基づき、2020年度の温室効果ガス削減目標を平成17(2005)年度総排出量比3.8%減以上として気候変動枠組条約事務局に登録し、「地球温暖化対策計画(*146)」に従い、森林吸収源対策により約3,800万CO2トン(2.7%)以上の吸収量を確保することとしている(*147)。なお、第2約束期間の目標を設定していない先進国も、COP17で合意された第2約束期間の森林等吸収源のルールに則して、2013年以降の吸収量の報告を行い、審査を受けることとなっている(*148)。

平成29年度 森林・林業白書「第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(2)」より

とあり、京都議定書の第2約束期間においては,我が国は目標を設定していませんし、温室効果ガスの排出量が増大している新興の途上国も,削減目標を設定することは課せられていませんので、間違いです。

④の文章ですが、

IPCC第5次評価報告書によれば、将来、温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオをとったとしても、世界の平均気温は上昇し、21世紀末に向けて、気候変動の影響のリスクが高くなると予測されています。

「気候変動の影響への適応計画」は、自然生態系への被害を最小化するためだけでなく、国民の生命、財産及び生活、経済、自然環境等への被害を最小化あるいは回避し、 迅速に回復できる、安全・安心で持続可能な社会の構築を目指して策定されています。

よって、間違った文章です。

⑤は妥当な文章です。

また、COP17における合意に基づき、全ての締約国に適用される2020年以降の新たな法的枠組みについて、2015年のCOP21での採択を目指した交渉が進められてきた。その結果、2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、2020年以降の気候変動対策について、先進国、開発途上国を問わず全ての締約国が参加する公平かつ実効的な法的枠組みである「パリ協定(*149)」が採択された(*150)(資料 II -37)。

政府は、「パリ協定」や平成27(2015)年に気候変動枠組条約事務局へ提出した約束草案(*154)等を踏まえ、我が国の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための計画である「地球温暖化対策計画」を作成し、平成28(2016)年5月に閣議決定した。同計画では、2020年度の温室効果ガス削減目標を平成17(2005)年度比3.8%減以上、2030年度の温室効果ガス削減目標を平成25(2013)年度比26.0%減とし、この削減目標のうち、それぞれ約3,800万CO2トン(2.7%)以上、約2,780万CO2トン(2.0%)を森林吸収量で確保することを目標としている。

平成29年度 森林・林業白書「第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(2)」より
平成29年度 森林・林業白書より
正答番号

5

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