2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分に ついては採点されません。
これは、必須問題13題のうちの5問目の問題です。
問題
生態系における物質循環とエネルギーの流れに関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 炭素は,タンパク質,脂質などの有機化合物の骨格を作る元素であり,生物体の乾燥重量のほぼ9割を占めている。現存する生物体に含まれる炭素は,多くが古い地質時代の生物の遺骸から生じる二酸化炭素に由来する。
- 大気中などで二酸化炭素として存在する炭素は,生産者の光合成などによって有機物に合成され,生物界に取り込まれる。この有機物の大部分は,生産者自身と消費者や分解者の呼吸によって,二酸化炭素に分解され,再び大気中などに戻されることで循環している。
- 生物体に含まれる窒素は,アミノ酸,核酸,セルロース,クロロフィルなどを構成する重要な元素である。窒素は窒素分子として大気中に多く含まれるが,これを直接に吸収して利用できる生物はアゾトバクター,シアノバクテリア,マメ科の植物やハンノキなどに限られる。
- 多くの植物は,脱窒素細菌の働きによって土壌中に放出された硝酸塩やアンモニウム塩などの無機窒素化合物を吸収し,窒素固定の過程で有機窒素化合物を合成する。これらの有機窒素化合物は,食物連鎖を通して生態系内を移動し,様々な生物の生体物質として利用される。
- 太陽の光エネルギーは,光合成によって有機物の中に熱エネルギーとして取り込まれる。取り込まれた熱エネルギーは,物質の移動とともに消費者や分解者へと移動し,様々な生命活動に利用された後,化学エネルギーとなり生態系内に蓄積される。
解説
①の文章ですが、
「人間の元素存在比」は、酸素65.0%、炭素18.0%、水素10.0%、窒素3.0%、カルシウム1.5%、リン1.0%、少量元素0.9%、微量元素0.6%です。
なので、「生物体の乾燥重量のほぼ9割を占めている」の部分が間違いです。
②は妥当な文章です。
③の文章ですが、
窒素はアミノ酸、核酸、クロロフィル等を構成する重要な元素ですが,セルロースには含まれません。
④の文章ですが、
多くの植物は,硝化細菌の働きによって土壌中に放出された硝酸塩やアンモニウム塩などの有機窒素化合物を吸収し,窒素同化の過程で無機窒素化合物を合成します。これらの無機窒素化合物は,食物連鎖を通して生態系内を移動し,様々な生物の生体物質として利用されます。
なので、全文が間違いです。
⑤の文章ですが、
太陽の光エネルギーは,光合成によって有機物の中に化学エネルギーとして取り込まれます。取り込まれた化学エネルギーは,物質の移動とともに消費者や分解者へと移動し,様々な生命活動に利用された後,熱エネルギーとなり生態系内に蓄積されます。
なので、化学エネルギーと熱エネルギーについての記述が逆です。
2
植物の取り込む硝酸塩は無機窒素化合物であり、そこから作られるアミノ酸は有機窒素化合物なので、4番の黒文字部分は脱窒素細菌以外は正しくないでしょうか