2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの25問目の問題です。
問題
【No. 25】 林業の種苗に関する記述として最も妥当なのはどれか。なお,データは,「平成30年版 森林・林業白書」による。
- 我が国の針葉樹の山行苗木の生産量(国営分を除く)は,一時期ピーク時の1割以下に落ち込んだが,近年の主伐面積の増加などを受け,平成27年度には平成17年度の約3倍まで増加した。樹種別にみると,平成17年度の生産量は,多い方からスギ,ヒノキの順であったが,平成27年度はカラマツ,ヒノキの順となっている。
- 根鉢の内側に突起やスリットなどが設けられているコンテナ苗は,成形性が高く植え付け時に扱いやすい,植栽適期を拡大できる可能性があるなどのメリットがある一方,苗木生産時に水平方向の根巻きが発生しやすい,底面から飛び出した根を切る手間がかかるなどのデメリットがある。
- 我が国のコンテナ苗の生産量は,平成27年度には約40万本と平成20年度の約70倍まで増加し,20の都道府県で生産されている。コンテナ苗の育苗は,直接播種や発芽した幼苗の移植などが行われているが,挿木では発根が難しいため行われていない。
- 林野庁では,花粉症対策として無花粉スギ品種・少花粉スギ品種などの花粉症対策苗木の供給拡大に取り組んでいる。平成28年度のスギの花粉症対策苗木の生産量は,平成17年度の50倍以上に増加し,スギの苗木生産量全体の約3割となっている。
- 優良な種苗確保のための指定採取源には,林業種苗法に基づき都道府県知事が指定する特別母樹・特別母樹林,市町村長が指定する普通母樹・普通母樹林の二つがあり,平成27年度末現在,約6千箇所が指定されている。
解説
①の文章ですが、
我が国における山行(やまゆき)苗木の生産量は、平成27(2015)年度で約6,100万本であり、ピーク時の1割以下となっている(資料 II -11)。このうち、針葉樹ではスギが約1,945万本、ヒノキが約940万本、カラマツが約1,190万本、マツ類が約238万本となっており、広葉樹ではクヌギが約156万本、ケヤキが約26万本となっている。また、苗木生産事業者数は、全国で約880事業体となっている(*30)。苗木の需給については、地域ごとに過不足が生ずる場合もあることから、必要量の確保のため、地域間での需給調整等が行われている。
平成29年度森林・林業白書より
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
コンテナ苗は、根鉢の内側に突起やスリットなどが設けられていることにより、根巻きが起きやすいポット苗と異なり、根巻きが生じにくくなっています。
また、底面に穴が空いていることにより、ポット苗に比べて根切りの手間がありません。
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
林野庁では、コンテナ苗の生産拡大に取り組んでおり、その生産量は、平成20(2008)年度の約6千本から平成27(2015)年度の約470万本に大幅に増加し、前年度からも約2倍に増加している(資料 II -12)。
平成29年度森林・林業白書より
コンテナ苗は、現在では、種子を苗畑に播種し、このうち発芽が確認されたものをコンテナに移植して育苗して生産されている。これは、林業用樹種の 種子の発芽率が一般的には低いためであるが、コンテナ苗の生産コストをより縮減していくためには、種子をコンテナに直接播種し、移植に要する手間を省いていく必要がある。
平成28年度森林・林業白書より
よって、間違った文章です。
④は妥当な文章です。
林野庁では、花粉発生源対策として、スギ人工林等を花粉の少ない森林へ転換する取組を推進するため、花粉発生源となっているスギ人工林等の伐倒と花粉症対策苗木(*40)の植栽や、スギ人工林を花粉症対策苗木へ植え替えるため、スギの加工業者等が行う森林所有者への働きかけ等に対する支援を行っている。
スギの花粉症対策苗木については、平成29(2017)年度までにスギ苗木の年間供給量の過半程度(約1,000万本)とすることを目標に、少花粉スギ等の種子を短期間で効率的に生産する「ミニチュア採種園」の整備を進めるとともに、苗木生産の施設整備やコンテナ苗生産技術の普及等により、花粉症対策苗木の供給拡大に取り組んでいる。その結果、スギの花粉症対策苗木の生産量は、平成17(2005)年度の約9万本から平成28(2016)年度には約533万本へと約59倍に増加した(資料 II -13)。しかしながら、スギ苗木生産量全体に占めるスギの花粉症対策苗木の割合は約3割となっていることから、引き続き、花粉症対策苗木の需要及び生産の拡大を推進することとしている。
平成29年度森林・林業白書より
⑤の文章ですが、
優良な種苗の確保のための指定採取源については、林業種苗法に基づき農林⽔産⼤⾂が指定する特別⺟樹(林)と都道府県知事が指定する普通⺟樹(林)及び育種⺟樹(林)があり、平成30(2018)年度末現在、全国で、5,757箇所、16,023ヘクタールとなっています。
林野庁HP「林業種苗生産」より
よって、間違った文章です。
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