2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの20問目の問題です。
問題
【No. 20】 我が国の森林害虫による被害に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- マツノマダラカミキリは,マツ類の集団枯損を引き起こす共生菌の媒介昆虫である。成虫が枯れたマツから脱出後、健全なマツの幹材部に穿孔し摂食する際,共生菌が樹体内に侵入する。
- マイマイガの幼虫は,カラマツ,スギ,コナラなど幅広い樹種の樹幹に穿孔して食害する。防除法としては,成虫が枯れ枝に産卵するので,一般に,枝打ちが効果的である。
- マツカレハの幼虫は,松毛虫と呼ばれ,マツ類などの葉を食害する。成虫は 7 ~ 8 月に羽化した後,直ちに産卵し,ふ化した幼虫は樹皮の裂け目などで越冬する。
- スギザイノタマバエは,主に中部・東北地方に生息しており,幼虫は,スギやヒノキなどの樹皮や辺材部を食害する。食害痕は,材の変色や腐朽が生じ,トビグサレといわれる。
- スギノハダニは,スギの針葉を吸汁して加害する。被害を受けた樹木の葉が赤く枯れあがる様子から,スギ赤枯病といわれる。これにより樹木が枯死することが多い。
解説
①の文章ですが、
マツノマダラカミキリは羽化脱出する際、蛹室壁面に集まったマツノザイセンチュウを、体表面や上翅の裏側など、特に気門に大量に付着させる。そして羽化脱出後、マツ小枝の樹皮につくったかじりあと(後食痕)に、マツノザイセンチュウを伝搬する。
森林・林業実務必携より
なお、マツノザイセンチュウは植物寄生性線虫であり、共生菌ではありません。
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
マイマイガ
森林・林業実務必携より
葉の100%食害で、約70%の成長阻害が認められている。
防除には、化学農薬の他、マイマイガ幼虫を用いて増殖したCPV剤とNPV剤(核多核体病ウイルス)が実用化され、欧米ではB.t剤がよく使われている。
よって、間違った文章です。
③は妥当な文章です。
④の文章ですが、
スギザイノタマバエは、九州とその周辺の島に分布し、スギのみに寄生する材質劣化害虫である。発生は年3回と考えられる。樹皮の食害部で越冬した幼虫は、4〜5月ごろ蛹化する。蛹は樹皮の表面に這い出て、蛹体を半ば出して羽化する。成虫の生存期間は短く、ただちに産卵する。ふ化した幼虫は内樹皮表面に寄生し、皮紋(しみ)を形成する。皮紋が形成層に達すると、形成層は壊死し、褐色の林斑が形成される。薬剤防除は難しいが、間伐を繰り返すことは効果的であり、抵抗性品種が開発されている。
森林・林業実務必携より
なお、トビグサレを生じさせるのはスギノアカネトラカミキリです。
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
スギノハダニ
http://www.jppn.ne.jp/fukuoka/boujyo/kaboku/5481.htmより
初夏にスギの葉が退色してから気づくことが多い。小枝を紙の上で叩くと微少なアカダニが見つかれば本種であろう。雌の体長は0.4mm卵形、雄はやや小さく逆三角形でいずれも燈色である。スギ葉上の卵で越冬し、4月に孵化したあと11月頃まで年10回以上世代を繰り返す。加害部にクモの巣状の糸をかけ、葉は部分的に枯死褐変する。密度が高まるのは5~6月と9月頃だが、空梅雨の年は被害が出やすい。
なお、スギ赤枯病は、Passalora sequoiaeという菌類によって引き起こされる病気です。
よって、間違った文章です。
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