2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの21問目の問題です。
問題
【No. 21】 光合成に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 葉緑体は光化学反応,電子伝達,炭素同化までの一連の光合成反応が行われる細胞内小器官である。その中には数層の大型のチラコイド膜が配列し,さらにその間には小型のチラコイド膜数層が重なって挟まっており,この部分はストロマと呼ばれている。チラコイド膜以外の部分はグラナと呼ばれている。
- 緑色植物が持つ光合成色素には,大別するとクロロフィル,カロテノイド,フィコビリンの3種類がある。このうち,クロロフィルaとbは650~700nmの波長のみを吸収し,カロテノイドのb‒カロテンは400~500nm の波長のみを吸収する。
- カルビン-ベンソン回路では,Rubiscoの触媒によりCO2とリブロース二リン酸(RuBP)が反応してホスホグリセリン酸(PGA)が生成され,その後,光化学反応によって作られた ADPとNADPH*のエネルギーにより PGAからデンプン生成とRuBPの再生が行われる。Rubiscoは,葉に含まれる可溶性タンパク質の約1割を占める。
- トウモロコシなどのC4植物では,表皮細胞と葉肉細胞の葉緑体が分業している。表皮細胞では光化学反応と,CO2が固定されアスパラギン酸やリンゴ酸などが生成されるC4ジカルボン酸経路の反応が行われ,葉肉細胞ではカルビン-ベンソン回路によるCO2同化が行われている。
- 光-光合成曲線において,呼吸によるCO2放出量と光合成によるCO2吸収量が等しいときの光の強さを光補償点,光を強くしても光合成によるCO2吸収量が頭打ちになるときの光の強さを光飽和点と呼ぶ。陰葉は,陽葉に比べ,光補償点が低く,光飽和点でのCO2吸収量が小さい。
* NADPHはNADPH + H+又はNADPH2を簡略化したもので,いずれも同義である。
解説
①の文章ですが、
葉緑体は小型のチラコイド膜数層が重なって挟まっている部分がグラナ、チラコイド膜以外の部分がストロマと呼ばれています。
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
クロロフィルa、b、カロテノイドの吸収スペクトルは以下の通りです。
クロロフィルaとbは650~700nmの波長のみを吸収するのではなく、400~480nmの波長も吸収します。
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
カルビン-ベンソン回路でPGAにNADPHと共に結合するのは、ADPではなくATPです。
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
C4植物では,維管束鞘細胞と葉肉細胞の葉緑体が分業しています。
また、C4植物は、通常は葉肉細胞で行うカルビン・ベンソン回路を維管束鞘細胞で行います。
よって、間違った文章です。
⑤は妥当な文章です。
正答番号
5