2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、必須問題13題のうちの9問目の問題です。
問題
生物多様性の保全に関連した我が国の取組に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 自然公園法は,前身の国立公園法の制定当初から,国立公園,国定公園及び都道府県立自然公園から成る自然公園の保護を通じた生物多様性の確保を目的に掲げている。特に希少な生態系を有する国立公園の特別保護地区においては,農林漁業活動以外の現状変更の行為について制限し,生物多様性を厳正に保全している。
- 生物多様性国家戦略は,種の保存法*に基づき策定される,生物多様性の保全と持続可能な利用に関する政府の基本的な計画である。同戦略には,生物多様性の三つの危機として,開発など人間活動による危機,自然保護活動の縮小による危機及び地球環境の変化による危機が挙げられている。
- 自然環境保全法は,自然環境の適正な保護と利用の両立を目的としている。同法では,国が指定する原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域,都道府県が指定する都道府県自然環境保全地域について,優れた自然環境に対する保護と持続可能な資源の利用を組み合わせ,生物多様性の保全を実現するとしている。
- 国有林野における保護林制度は,世界自然遺産をはじめとする原生的な天然林や,生物多様性保全の核となる森林等の保護を目的に,保護林に設定された森林を,定期的なモニタリング調査などを通じて厳格に保護・管理するものである。平成27年の改正では,自立的復元力を失った森林に対する復元の考え方が導入された。
- 自然再生推進法は,過去に損なわれた地域の生態系やその他の自然環境を取り戻すことを目的としている。自然再生基本方針及び自然再生事業実施計画の策定,自然再生事業の実施までを政府主導の下で一貫して行い,開発行為等により損なわれる環境と同種のものを創出する代償措置により,地域の自然環境を再生するものである。
* 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
解説
①の文章ですが、
国立公園の特別保護地区では、以下の行為には、許可が必要となります。
- 樹木の損傷
- 動物の放鳥獣(家畜の放牧を含む)
- 植物の植栽・播種
- 物の集積・貯蔵
- たき火
よって間違いです。
②の文章ですが、
生物多様性国家戦略は,「種の保存法」ではなく、生物多様性条約及び生物多様性基本法に基づく、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画です。
また、生物多様性の危機として以下4つが挙げられています。
- 「第1の危機」開発など人間活動による危機
- 「第2の危機」自然に対する働きかけの縮小による危機
- 「第3の危機」外来種など人間により持ち込まれたものによる危機
- 「第4の危機」地球温暖化や海洋酸性化など地球環境変化による危機
よって間違いです。
③の文章ですが、
自然環境保全法の目的は以下のとおりで、利用の両立を目的としているわけではありません。
他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって、自然環境を保全することが特に必要な区域等の生物の多様性の確保その他の自然環境の適切な保全を総合的に推進することにより、広く国民が自然環境の恵沢を享受するとともに、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与する。
自然環境保全法 第1条より
優れた自然環境を維持している地域として、「原生自然環境保全地域」、「自然環境保全地域」、「沖合海底自然環境保全地域」または「都道府県自然環境保全地域」が指定されています。
よって間違いです。
④の文章は妥当な文章です。
⑤の文章ですが、
自然再生推進法は,過去に損なわれた地域の生態系やその他の自然環境を取り戻すことを目的としていますが、自然再生基本方針及び自然再生事業実施計画の策定、自然再生事業の実施までを政府主導の下で一貫して行うのではなく、NPOや専門家を始めとする地域の多様な主体の参画と創意により、地域主導のボトムアップ型で進める、としています。
よって間違いです。
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