2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの10問目の問題です。
問題
【No. 10】 我が国における林業の生産性の向上に向けた取組に関する記述A~Dのうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。なお,データは,「平成30年版 森林・林業白書」による。
A.施業の集約化により,路網の合理的な配置や高性能林業機械を効果的に使った作業が可能となることから,素材生産コストの縮減が期待できる。また,径級や質の揃った木材をまとめて供給することが容易となり,市場のニーズに応えるとともに,価格面でも有利に販売することが期待できる。
B.施業の集約化を推進するため,森林所有者自らが林業事業体に対して施業の方針や事業収支などを提示して施業の実施を進める「提案型集約化施業」が行われている。林野庁では,この施業を支援する「森林総合監理士」の育成に取り組んでいる。
C.森林経営計画制度は,市町村が定める一定の区域内で1ha 以上の森林を取りまとめた場合にも計画が作成できるよう運用改善を行ったため,森林経営計画の作成は進み,平成28年度末現在,民有林面積の8割以上で森林経営計画が作成されている。
D.我が国は,地形が急峻で多種多様な地質が分布しているなど厳しい条件下にあるため,路網整備は進まず,平成28年度末現在,林内路網密度は全国平均で約5m/haである。一方,現行の「森林・林業基本計画」では,路網整備の目標とする水準を,緩傾斜地の車両系作業システムでは15m/ha以上としている。
- A
- A,C
- B,D
- A,B,D
- B,C,D
解説
Aは妥当な文章です。
Bの文章ですが、
また、これを担う人材として「森林施業プランナー」の育成が進められています。
よって、間違った文章です。
Cの文章ですが、
平成24(2012)年度から導入された「森林法(*40)」に基づく森林経営計画制度では、森林の経営を自ら行う森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者が、林班(*41)又は隣接する複数林班の面積の2分の1以上の森林を対象とする場合(林班計画)や、所有する森林の面積が100ha以上の場合(属人計画)に、自ら経営する森林について森林の施業及び保護の実施に関する事項等を内容とする森林経営計画を作成できることとされている。森林経営計画を作成して市町村長等から認定を受けた者は、税制上の特例措置や融資条件の優遇に加え、計画に基づく造林や間伐等の施業に対する「森林環境保全直接支援事業」による支援等を受けることができる。
同制度については、導入以降も現場の状況に応じた運用改善を行っている。平成26(2014)年度からは、市町村が地域の実態に即して、森林施業が一体として効率的に行われ得る区域の範囲を「市町村森林整備計画」において定め、その区域内で30ha以上の森林を取りまとめた場合にも計画(区域計画)が作成できるよう制度を見直し、運用を開始した。この「区域計画」は、小規模な森林所有者が多く合意形成に多大な時間を要することや、人工林率が低いこと等により、林班単位での集約化になじまない地域においても計画の作成を可能とするものである。これにより、まずは地域の実態に即して計画を作成しやすいところから始め、計画の対象となる森林の面積を徐々に拡大していくことで、将来的には区域を単位とした面的なまとまりの確保を目指すこととしている(資料3-18)。
しかし、森林所有者の高齢化や相続による世代交代等が進んでおり、森林所有者の特定や森林境界の明確化に多大な労力を要していることから、平成30(2018)年3月末現在の全国の森林経営計画作成面積は525万ha、民有林面積の約30%となっている。
平成30年度森林・林業白書より
よって、間違った文章です。
Dの文章ですが、
我が国においては、地形が急峻(しゅん)で、多種多様な地質が分布しているなど厳しい条件の下、路網の整備を進めてきたところであり、平成29(2017)年度末現在、林内路網密度は22m/haとなっている(*62)。
「森林・林業基本計画」では、森林施業の効率的な実施のために路網の整備を進めることとしており、林道等の望ましい延長の目安を現状の19万kmに対し33万km程度としている。特に、自然条件等の良い持続的な林業の経営に適した育成単層林を主体に整備を加速化させることとしており、林道等については令和7(2025)年に24万km程度とすることを目安としている。また、「全国森林計画」では、路網整備の目標とする水準を、緩傾斜地(0°~15°)の車両系作業システムでは100m/ha以上、急傾斜地(30°~35°)の架線系作業システムでは15m/ha以上等としている(資料3-22)。
平成30年度森林・林業白書より
よって、間違った文章です。
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