2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林資源科学」の問題です。
問題
【No. 28】 森林土壌の調査に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 森林土壌の断面は,一般に,落葉・落枝やその分解物などから成る有機物層と,岩石の風化物など無機物から成る鉱質土層(無機質土層)と呼ばれる二つの部分から構成されている。鉱質土層は,腐植を含まないことから有機物層と区別が可能で,最下層のC層は,A層,B層と比較して,母材の風化が激しく土壌生成作用の影響を強く受けている。
- 有機物層である A0 層は,有機物の分解程度によって,L層,F層及びH層に細分される。適度な温度と水分に恵まれた所では,L層の有機物の分解が早く進むことでF層とH層が発達する。地下水の停滞などにより生じる湿潤な環境下では,F層やH層には菌糸網層であるM層が出現する。
- 土壌粒子である細土は,その粒径により,砂(粗砂及び細砂),微砂(シルト),粘土に区分される。土壌の粒径組成である土性は,砂,微砂,粘土の重量割合を機械分析することで正確に判定できるが,野外調査時には,一般に,湿らせた少量の土塊を指ですり潰した際の,砂の混じり具合や粘土の粘り具合から判定する。
- 土壌断面を観察する際,穴を掘る位置は,地形,植生などから区域を代表している箇所とし,地表の低木やササなどを刈り払った上で,土壌断面予定線に沿って上方から垂直に掘り進める。土壌断面の最上部の有機物層については,階層構造が崩れないよう丁寧に保管袋に移した後,表層から基層までの層位を観察する。
- 炭素と窒素の比であるC/N比は,有機物の分解の程度を示す指標で,土壌の肥沃度の判断に資するものである。森林では,落葉などの有機物の分解が進むにつれて,炭素が微生物の菌体の合成に伴い増加するため,C/N比が高くなる傾向があるが,一般に,森林土壌は,肥沃な農業土壌よりもC/N比が低い傾向にある。
解説
①の文章ですが、
鉱質土層は,腐植を含みます。
よって、間違った文章です。
②の前半は正しい文章ですが、
菌糸網層は,一般に尾根筋などの乾燥しやすいところの土壌のA0層やA層中,まれにB層中に層状又はレンズ状に発達しますが,いったん乾燥すると湿り難い性質が強いため,この層が形成されると土壌はますます乾燥しやすくなります。
よって、間違った文章です。
③は妥当な文章です。
④の文章ですが、
土壌断面作成方法は以下のとおりです。
また、断面周辺の植生の状況がわかるように、地表の低木やササなどは刈り払いません。
よって、間違った文章です。
⑤の前半は正しい文章ですが、
微生物の生息に不利な条件下、例えば尾根部の乾燥・低温によって土壌は、低pH、高C/Nとなり、糸状菌が細菌よりも多く、微生物の代謝活性は低下する。そのため、植物への養分供給力が低下し、養分含有量の少ない落葉落枝しか土壌に還元されず、引き続き低pH、高C/Nとなる。逆に、微生物の生息に有利な条件下では、植物への養分供給力が大きく、養分に富む落葉落枝が土壌に還元され、土壌は微生物活性に適したpH、低C/Nとなる。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
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