2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林環境科学」の問題です。
問題
【No. 21】 植物の種子散布に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 乾果といわれる種子の周りに多肉質の果肉が付随した構造を持つ果実を作る植物は,種子が動物の体内を通過する間に運ばれる被食(周食)散布を行う。森林において,この散布様式を持つ樹種の割合は,高緯度地域の方が,低緯度地域に比べて高い。
- 風によって種子を散布する様式の植物は,種子や果実の一部が翼のように張り出したり,プロペラや羽毛のような形状の構造を持つ。散布体が母樹から分離して落下し始めると,滑空,回転,浮遊することによって落下の加速度が抑えられ,滞空時間が延びることで散布される。
- 自重により落下する種子の散布様式を重力散布というが,これらの種子は落下後にげっ歯類や偶蹄類をはじめ多くのほ乳類などに持ち去られ,地中に埋められることで散布されることがある。このような散布様式は貯食散布といわれ,地表から深い場所に埋められた種子ほど発芽する確率が高い。
- アリによって種子が散布される様式の全ての種子には,エライオソーム(脂肪体)と呼ばれる被食部が付随している。アリが巣まで種子を運び,被食部を採食後に,アリにとって不要な種子が捨てられることで種子が散布される。このような散布様式を持つ植物は,我が国には生育しない。
- 棘や粘着物質などによって動物の体毛や羽などに種子を付着させる散布様式を付着散布という。種子が付着する動物にとっては,外部寄生虫の感染を抑止するなどの恩恵もある。世界的には,付着散布を行う植物の種数の割合は,各地域とも地域に生育する植物種の20~30%を占める。
解説
①の文章ですが、
前半は乾果ではなく液果についての説明文です。
液果は、低緯度・低標高地域の方が高い出現状況となっています。
よって、間違った文章です。
②は妥当な文章です。
③の文章ですが、
前半は貯食散布についての正しい文章ですが、「地表から深い場所に埋められた種子ほど発芽する確率が高い」とは言えません。
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
このような散布様式を持つ植物は,我が国ではオオイヌノフグリやカタクリ、スミレ等が該当します。
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
前半は付着散布についての正しい文章ですが、「種子が付着する動物にとっては,外部寄生虫の感染を抑止するなどの恩恵もある。世界的には,付着散布を行う植物の種数の割合は,各地域とも地域に生育する植物種の20~30%を占める。」とは言えません。
よって、間違った文章です。
正答番号
2