2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの36問目の問題です。
問題
【No. 36】 我が国における砂防構造物の計画や構造に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 計画基準点から下流の河川や保全対象にとって無害,かつ下流の河道の安定のために必要な土砂量を計画流出調節土砂量という。また,新規崩壊土砂量,既往崩壊拡大見込み土砂量のうち,河道に流出する土砂量の合計を計画流出土砂量という。
- 一般に,高さ5m未満の横工を砂防堰堤,高さ5m以上の横工を床固工という。これらの設置箇所としては,渓床及び両岸が,岩盤よりも砂れき層である場合の方が好ましいとされる。
- 水通し断面の決定に際しては,計画箇所における計画洪水流量を決定する必要がある。計画洪水流量の算出には年超過確率が1/10程度の規模の降水量が用いられ,一般に貯留関数法により算出される。
- 砂防堰堤が転倒に対して安全であり,かつ堰堤の堤底において引張応力を生じないように,堰堤に作用する荷重の合力の作用線が原則として堤底の中央3分の1内に入らなければならない。
- 砂防堰堤の天端幅は,土石流の発生区間の方が非発生区間よりも厚くなければならず,土石流発生区間では,一般に1.0mとされている。また,下流のり勾配は土石流発生区間で1:0.6,非発生区間で1:0.8とする。
解説
①の文章ですが、
砂防計画による土砂処理の計画は、施設配置により次式に示した計画生産抑制土砂量(B)、計画流出抑制土砂量(C)、計画流出調節土砂量(D)を与えることによって行う。
E=(Q+AーB)(1ーα)ーCーD
ここで、E:計画許容流砂量;計画基準点から下流の河川や保全対象にとっては無害、かつ下流の河道の安定のために必要な土砂量
森林・林業実務必携より
Q:ある計画基準点の直上流の計画基準点における計画流出土砂量;計画生産土砂量のうち土石流または流水の掃流力によって運搬されて直上流の計画基準点に流出する土砂量のことをいう。
A:計画生産土砂量;計画規模の降雨によって、山腹及び溪岸における新規崩壊土砂量、既往崩壊拡大見込み土砂量、既往崩壊の残土量のうち河道に流出するもの、および河床に堆積している土砂のうち出水によって流出する土砂量をいう。
B:計画生産抑制土砂量(砂防施設(砂防堰堤、山腹工、床固工など)による)
α:河道調節土砂量の(Q+AーB)に対する割合;例えば、天竜川では0.42、損斐川では0.11〜0.28が用いられている。
C:計画流出抑制土砂量(砂防施設(砂防堰堤、遊砂地など)による)
D:計画流出調節土砂量(砂防施設(砂防堰堤、遊砂地など)による)
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
砂防堰堤の計画個所は、渓床および両岸に岩盤が存在することがもっとも好ましいが、目的によっては砂れき層上に計画しなければならないことがある。基礎地盤が砂れき層の場合には原則的にダム高は15m未満とする。
森林・林業実務必携より
渓流保全工は洪水の乱流および渓床高の変動を抑制するための横工(床固工、帯工など)および渓岸侵食を防止するための縦工(護岸工、渓畔林など)を組み合わせて、山腹工や砂防堰堤と連携して渓流の下流部および扇状地内の河川の安定化を図り、乱流および縦・横侵食による災害を防止するためのものである。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
計画洪水流量:水通し断面の決定に際しては、まずダムサイトにおける計画洪水流量(design flood discharge, ピーク流量)を決定する必要がある。河川砂防技術基準(案)計画編によると計画洪水流量の規模は降雨量の年超過確率1/100程度の規模もしくは既往最大雨量のうち、どちらか大きい値によることとなっている。ピーク流量Q’の算定には一般に合理式を用いている。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
④は妥当な文章です。
⑤の文章ですが、
天端幅:砂防堰堤の天端幅は、流出土砂などの衝撃に耐えるとともに、水通し部では通過砂れきの摩耗などにも耐えるような幅とする必要がある。一般には土石流の発生・流下・堆積区域では天端幅は3.0〜4.0mとし、それ以外(通常の土砂の流出渓流)では1.5〜2.5mとする。非越流部断面は、越流部断面と同一とすることを標準とする。
下流のり勾配:堰堤を越流して落下する転石により下流のり面が損傷されないために、下流のり勾配は一般に1:0.2とする。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
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