2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの32問目の問題です。
問題
【No. 32】 木材の力学的性質に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 木材は,繊維方向の圧縮や曲げの応力が大きくなると,それに応じてひずみも大きくなる。この関係は,ある値までは直線的関係となるが,その値を超えると曲線関係になる。直線域の上限における応力は比例限度応力と呼ばれる。
- ひずみを応力で除した値は弾性係数と呼ばれ,物体の変形しにくさを表す。木材の弾性係数は,放射方向で最も大きく,繊維方向で最も小さくなり,異方性を示す。
- 木材に一定の応力を生じさせておくと,時間の経過とともにひずみは徐々に増大する。この現象を「疲れ」という。一方,一定のひずみが生じている物体をそのままにしておくと,最初の応力は時間とともに減少する。この現象を「クリープ」という。
- 木材は最大応力に至ると破壊するが,このときの応力は弾性限度と呼ばれ,木材の強度を表す。木材の強度は,同一樹種内であれば,どの部位でも同様の強度を示す。
- 木材の強度は,木材の密度や含水率の影響を受ける。一般に,木材の密度が大きくなると,木材の強度は低下する。また,含水率が繊維飽和点以下の範囲では,含水率の上昇とともに木材の強度も増加する。
解説
①は妥当な文章です。
②の文章ですが、
弾性係数(ヤング率)は応力をひずみで除した値です。
木材はセルロースミクロフィブリルにより繊維方向に強化されている。また、放射方向に連続する放射組織が存在するなど組織構造的理由により、3方向に異方性(直行異方性)があり、ヤング率では繊維方向:放射方向:接線方向の比で10:1:0.5程度である。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
木材は粘弾性材料であり、時間とともに応力とひずみの関係が変化する材料である。応力を一定にしてひずみの増加を検討するクリープ、一定ひずみを与えて応力の減少を検討する応力緩和などにより、粘弾性特性が調べられる。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
木材の強度は,同一樹種内であっても,部位によって異なります。
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
木材強度は密度と高い正の相関関係がある。これは、真密度が一定なので、見かけの密度は木材の木口断面の細胞壁の面積占有率により決定される。細胞壁実質の真の応力を考慮すると、応力は力を断面積で割った値なので、面積占有率が小さく密度が低い木材ほど、細胞壁に加わる応力は大きくなり、見かけ上は小さな荷重で破壊することになる。
結合水は細胞壁内の非晶領域に入り込むので、木材の力学的特性に大きく影響を及ぼすが、自由水は影響しない。したがって、一般に、含水率は0%から繊維飽和点の間で、強度性能などに影響するが、繊維飽和点以上では変化しない。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
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選択肢4の解説について、引用されている内容が問題とは関係ないものになっている気がします。訂正いただけますでしょうか。
ご指摘ありがとうございます。助かりました。他にも見つけた時は修正しますので教えていただけると嬉しいです。