2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林資源科学」の問題です。
問題
【No. 31】 樹木の生理に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 暖かさの指数(warmth index:WI)とは,月平均気温が5℃以上となる月数であり,樹木の生育期間を表す。WIの値を用い我が国の気候帯を区分すると,10以上が亜熱帯,7~9が暖温帯,4~6が冷温帯,1~3が寒帯となる。
- 植物体内の水が水蒸気として大気中に放出される現象を蒸散という。蒸散によって消費される水分量は,植物が吸収した水分量の半分程度を占める。蒸散は,主として葉の水孔を通して行われるが,葉のクチクラ層を通じても微量であるが行われる。
- 葉の細胞中の水が蒸散により減少すると,細胞液の濃度が高まり,水が細胞外から移動し,細胞は膨張する。その際,細胞を取り囲む細胞壁には,細胞の膨張を阻もうとする膨圧が生じる。このとき,細胞の浸透圧は,吸水圧と膨圧の差により求められる。
- 樹木が弱光に耐えて生育できる性質を耐陰性といい,その程度により陽樹,中庸樹,陰樹に区分される。耐陰性の弱い陽樹は,相対的に葉が薄く,強い光を利用することで高い光合成速度を示す。種子は主に風散布で,寿命は短い。主な陽樹としてカンバ,ハンノキ,ブナが挙げられる。
- 光合成反応は葉緑体のストロマとチラコイドでの反応に分けられ,ストロマでは,チラコイドで生産されたアデノシン三リン酸(ATP)などを用いて二酸化炭素を固定し有機酸を合成している。樹木の大部分はC3植物であり,ストロマでの反応における最初の生産物は炭素数3の化合物である。
解説
①の文章ですが、
暖かさの指数(warmth index, WI)とは月平均気温5℃以上の月について、月平均気温から5℃を差し引いた値の1年間の合計値である。
WIの値を用い、熱帯を240以上、亜熱帯を180〜240、暖温帯を85〜180、冷温帯を45〜85、亜寒帯を15〜45、寒帯を0〜15で区分している。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
蒸散は,主として葉の気孔を通して行われます。
また、気温が高く乾燥した日には、根から吸収される水分のおよそ90%相当が蒸散されます。
よって、間違った文章です。
③の前半は妥当な文章ですが、
葉中での浸透圧と膨圧の差が吸水圧です。そのため、細胞の浸透圧は,吸水圧と膨圧の和により求められます。
よって、間違った文章です。
④の前半は妥当な文章ですが、
耐陰性の弱い陽樹は,相対的に葉が厚いです。
また、カンバ,ハンノキは陽樹ですが、ブナは陰樹です。
よって、間違った文章です。
⑤は妥当な文章です。
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