2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの24問目の問題です。
問題
【No. 24】 植物群系の地理分布と我が国の植生に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- ケッペンの気候分類の大区分では,乾燥気候を除き,最寒月の月平均気温(CMAT)が18℃以上の地域を熱帯気候,CMATが-3℃以上18℃未満の地域を温帯気候(温暖気候),CMATが -3℃未満かつ最暖月の月平均気温(WMAT)が10℃以上の地域を亜寒帯気候(寒冷気候又は冷帯気候),WMATが10℃未満の地域を寒帯気候(極地気候)としている。
- ケッペンの気候分類の中区分では年降水量の多寡が重視され,熱帯では熱帯多雨気候に加え,熱帯サバナ気候や熱帯モンスーン気候に,温帯では温帯多雨気候と地中海性気候に,亜寒帯では亜寒帯多雨気候と亜寒帯寡雨気候に区分される。
- 東南アジアの熱帯山岳では,標高に沿って熱帯低地多雨林の上部に熱帯山地林が形成される。熱帯低地多雨林ではフタバガキ科やトウダイグサ科などが優占するのに対し,熱帯山地林ではアコウの近縁種などクワ科イチジク属が優占し,琉球列島の沿岸低地部の亜熱帯林と類似している。
- 我が国の温帯気候では,暖かさの指数(WI)*45 以上の地域には照葉樹林が,WI15~45の地域にはブナやミズナラなどが優占する夏緑広葉樹林が形成される。WI15以下の亜寒帯気候に属する地域にはシラビソやオオシラビソ,トウヒなどが優占する常緑針葉樹林が形成される。
- 我が国の温帯気候の山地渓谷沿いには,カバノキ科のダケカンバやネコシデ,ミヤマハンノキが優占する渓谷林が形成される。山地の尾根沿いや岩場にはマツ科のモミやツガとともにブナ科のアカガシやウバメガシが優占する林が形成される。
暖かさの指数(warmth index, WI)は,月平均気温5℃以上の月の月平均気温から5℃を差し引いた値の1年間の合計値。
解説
①は妥当な文章です。
Köppenは植生帯との対応に重点を置き、気象データをとりまとめて世界の気候区分を行なった。月平均気温を用いて、次のA〜Eの5種の気候帯に大別している。A:熱帯多雨気候群(最寒月の平均気温が18℃以上)、B:乾燥気候群(年間水量に比べて蒸発量が多い)、C:温帯多雨気候群(最寒月の平均気温が−3℃以上18℃未満)、D:冷帯気候群(最寒月の平均気温が−3℃未満、最暖月の平均気温が10℃以上)、E:寒帯気候群(最暖月の平均気温が10℃未満)。Aは熱帯林、Bは温帯林、Dは北方林に対応する。これらの気候帯を降水量の年間分布などから、さらに12の気候区に区分している。
森林・林業実務必携より
②の文章ですが、
ケッペンの気候区分の中区分では以下に区分されています。
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
フタバガキ科やトウダイグサ科は熱帯山地林に優占し、アコウは熱帯低地多雨林に優占することが多いです。
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
常緑広葉樹林(照葉樹林):暖かさの指数が85〜180、寒さの指数が−10以上、年平均気温13〜21℃で、沖縄本島北部から東北地方南部までの地域に分布している森林である。シイ類、カシ類が代表的である。
落葉広葉樹林(夏緑広葉樹林):平均気温は6〜13℃である。暖温帯落葉広葉樹林と温帯落葉広葉樹林に区分される。暖温帯落葉広葉樹林は暖かさの指数が常緑広葉樹林と同じ85以上であるが、寒さの指数が−10℃以下になる地域で、クリ、ケヤキ、コナラなどの混交林が代表的である。温帯落葉広葉樹林は暖かさの指数が45〜85で、本州の山岳地帯や東北地方北部、北海道の渡島半島に分布する森林である。ブナ、ミズナラが代表的である。
亜寒帯林(常緑針葉樹林):年平均気温は6℃以下、暖かさの指数が45〜65の北海道の広域に成立している森林で、トドマツ、エゾマツが代表的である。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
ダケカンバは渓谷ではなく亜高山帯の上部でよく見られる樹木です。
また、一般にモミは山腹によく生育します。
よって、間違った文章です。
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