2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林生物生産科学」の問題です。
問題
【No. 34】 森林の管理・経営に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 森林資源を持続的に利用するために森林からの収穫量を調整することを収穫規整という。最古の収穫規整法は材積配分法である。その代表的な方法の一つにフーフナーグル法があり,この方法では,全域の全林木の成長率をクラス分けし,これらの成長率と現在の蓄積から収穫予定量を決定する。
- 用材生産において,毎分期の収穫量を均等にするという考え方に基づき,平分法が提唱された。このうち,面積平分法は,分期ごとの伐採面積を均等にしようという方法であり,同じく平分法に区分される材積平分法と比較して計算が繁雑であるが,最初の輪伐期間から収穫量が均等になるという利点がある。
- 経験に基礎を置いた収穫規整法として照査法が提唱された。これは,ある経理期間の始めと終わりに胸高直径と樹高を測定し,その結果から得られる蓄積の変化を考慮し,収穫量を決定する方法である。過去の森林の取扱いに基づき,収穫量の規整を行い法正蓄積状態に近づけようとするものであり,この方法は法正蓄積法に区分されている。
- 20 世紀末の世界的な森林の減少・劣化を受け,国連環境開発会議*では,森林原則声明及びアジェンダ 21 が採択され,「持続可能な森林経営」に向けて各国が努力することが合意された。持続可能な森林経営では,木材生産の保続だけでなく,生物の多様性や水・土壌資源の保全など多面的な森林の機能の保全が目標とされる。
- 「持続可能な森林経営」の推進に向け,国際的な取組が進められている。2001年以降,「森林に関する政府間パネル」において政府間の対話が継続的に開催されている。また,持続可能な森林経営に関する国際的な基準・指標の作成及び評価が進められており,代表的な取組に,北半球の温帯林・北方林を所有する全ての国が参加するモントリオール・プロセスがある。
* 環境と開発に関する国際連合会議。1992 年にブラジルのリオデジャネイロで開催。
解説
①の文章ですが、
材積配分法:区画輪伐法より発展した方法であるが、材積を基準として規整するところに違いがある。代表的な方法として2種類がある。
①Beckmann法:全林の林木を直径の大きさによって成木と未成木の2つに分ける。次に未成木が成木になる期間を経理期間(収穫期間を指す)とし、成木の成長率は樹幹解析や年輪調査により1.5%〜2.5%の間でクラス分けし、これらの成長率から期間内の成長量を求め、この量に現在の蓄積を加えて期間内の収穫予定量とし、それを経理期間で割ったものが標準年伐量である。
森林・林業実務必携より
②Hufnagl法:全林を輪伐期(u)の1/2以上とそれ以下の林齢とに分け、前者の標準年伐量(E)を次式で求める。
E=(2V/u)+(FZ/2)
ここで、F:u/2以上の面積、V:Fの蓄積、Z:ha当たりの年成長量である。
よって間違った文章です。
②の文章ですが、
面積平分法:作業級ごとに輪伐期(u)と分期年数(n)を決めた後、森林区画を行って林班を構成する。林班の年齢や育成状態だけでなく林分配置も考慮して所属分期を決める。各分期の面積を合計し、それが法正分期面積(F/u)nに等しくなるように各林班の分期の繰り上げ繰り下げを行う。そして、第1分期の林班に対し、前途のVとZを合計した収穫量をnで割ったものが標準年伐量である。第2分期以降は、そのつど検討し収穫量を決定する。
森林・林業実務必携より
よって間違った文章です。
③の文章ですが、
照査法:Biolley(1880)がスイスの森林に導入したもので、森林を構成する各部分が継続的に最高の生産力を発揮できるように集約な施業を行う方法とされている。森林を林班に区画し、作業級と輪伐期は設定しないが、一定の経理期間n(5〜7年、または10年)を設ける。nのはじめに胸高直径のみからシルブ単位(フランスでの直径級の材積㎥単位)の材積表より蓄積を査定してV1とし、nの終わりに同様の方法で蓄積V2を査定する。次に期間中の収穫材積をYとすれば、経理期間内の成長量Zは次式
森林・林業実務必携より
Z=V2ーV1+Y
で表され、これをもって経理期間内の収穫予定量とする。この予定量を実行者に提示し、実行者は蓄積の変化、直径分布の推移や生育状況を考慮しながら収穫量を決定する。
また、照査法は成長量法に区分されています。
よって間違った文章です。
④は妥当な文章です。
⑤の文章ですが、
2001年以降は、経済社会理事会の下に設置された「国連森林フォーラム(UNFF(*114))」において、各国政府、国際機関、NGO(非政府組織)等の代表者により、森林問題の解決策について議論が行われている。
平成29年度森林・林業白書より
「モントリオール・プロセス」には、カナダ、米国、ロシア、我が国等の12か国(*130)が参加し、共通の「基準・指標」に基づき各国の森林経営の持続可能性の評価及び報告に取り組んでいる。
(*130)アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、中国、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ロシア、米国、ウルグアイ。
平成29年度森林・林業白書より
よって間違った文章です。
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