2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの17問目の問題です。
問題
【No. 17】 我が国の森林土壌の分類に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 我が国の森林土壌は,林野土壌分類によるとポドゾル,褐色森林土,赤黄色土,黒色土の四つの土壌群と未熟土に分類される。このうち,褐色森林土が最も広く分布し,次いでポドゾルが広く分布している。
- ポドゾルは,亜寒帯の針葉樹林下で良く発達するが,熱帯でもヒース林や山地針葉樹林に生成されることがある。堆積腐植から溶出した有機物により鉄やアルミニウム化合物が溶脱した漂白層と,その下に形成される集積層が特徴である。
- 赤黄色土は,我が国南西部の暖温帯の常緑広葉樹林で発達する成帯性土壌である。シイやカシなどの厚く硬い常緑葉のためリターの分解が遅く,A0層が厚く堆積する。A層は厚く,有機物含量が多く,B層は赤から黄色を呈する。
- 黒ボク土(林野土壌での黒色土)には,火山放出物を母材とし,ハロイサイトやバーミキュライトなどの結晶性粘土鉱物を主体とする黒ボク土と,火山放出物以外を母材とし,アロフェンなどの非晶質粘土鉱物を主体とする準黒ボク土がある。どちらも黒色の腐植層はイネ科由来の有機物とケイ酸との複合体から成る。
- 褐色森林土は,我が国において,温帯の非火山性山地の夏緑広葉樹林帯に広く分布する。尾根の乾性褐色森林土(BA)では,A0層のL層が厚く堆積し,A層は薄く,B層との境界は不明瞭で漸変的である。山腹斜面の適潤性褐色森林土(BD)では,A0層は発達せず,A層は比較的厚くB層との境界は明瞭である。
解説
①の文章ですが、
褐色森林土壌群(B)
森林・林業実務必携より
温暖・多雨の気候下で生成され、日本にもっとも多く分布(約6割)する。(A0)-A-B-C層をもち、溶脱、集積は認められない。典型、暗色型、赤色型、黄色型、表層グライ型の5つの亜群がある。さらに、層位の発達および推移状態、構造などにより土壌型・亜型に分類される。
黒色土群(Bl)
森林・林業実務必携より
厚い黒色ないし黒褐色のA層をもち、B層への推移は明、容積重は小、保水力・陽イオン交換容量は大。火山山麗や火山灰に覆われた台地に広く分布し、日本に2番目に多く分布(2割弱)する。黒色、淡黒色の2亜群がある。
よって、間違った文章です。
②は妥当な文章です。
ポドゾル群(P)は、温帯上部から寒帯、亜高山帯に分布する。ポドゾル化作用を受け、溶脱層と集積層を持ち、強酸性でせき悪である。
森林・林業実務必携より
ポドゾル
漂白した層と腐植または鉄・アルミニウムが集積した層の層序をもつ土壌。自然状態では、漂白層の上に粗腐植層が存在しているのが一般的である。ポドゾルは、粗腐植層から出てくる有機酸やフルボ酸によって直下の層の鉄やアルミニウムが溶け、下層に移動し、再び沈殿することにより集積層を形成する。化学性は、一般に強酸性を呈し、塩基類に乏しい貧栄養な土壌である。
農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター「日本土壌インベントリー」より
ポドゾルは、山地の一部、丘陵地や石灰岩台地に分布する。北海道・東北・中部地方の山地に主に分布するが、一部は海岸砂丘地にも発達している。
③の文章ですが、
赤黄色土
赤黄色土は、有機物の蓄積が少なく、塩基飽和度が低く、風化の進んだ赤色または黄色の土壌である。赤黄色土は、一般に有機物含量が低く、粘土含量が高く、ち密なため、透水性は極めて悪い。また、保水力も低いため、多雨時には湿害、乾燥時には干害を受けやすい。土壌の化学性は、塩基溶脱作用を激しく受けており、交換性塩基に乏しく、土壌pHは4.5~5.5の強酸性を示す。有機物の補給、酸性矯正、排水対策などが必要である。
農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター「日本土壌インベントリー」より
赤黄色土は、主に本州の中位段丘から高位段丘上および南西諸島一帯に分布する。
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
黒ボク土
黒ボク土は、主として母材が火山灰に由来し、リン酸吸収係数が高く、容積重が小さく、軽しょうな土壌である。有機物が集積して黒い色をしていることが多く、黒くてホクホクしていることから黒ボク土と呼ばれる。黒ボク土は、保水性や透水性が良く、ち密度(土の硬さ)が低く、耕起が容易であることから他の土壌に比べて物理性は良好である。土壌の化学性に関しては、概して、活性アルミニウムを多量に含むことから土壌の有機物含量は高くなるものの、植物養分として重要なリン酸の吸着力も高い傾向にある。
農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター「日本土壌インベントリー」より
黒ボク土は、主に北海道南部、東北北部、関東、九州に分布しており、活火山や2~3万年程度前まで活発な活動をしていた火山の分布状況を反映している。
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
表2.3「褐色森林土壌群の土壌型区分の主な特徴」※一部抜粋
土壌型と生成環境 | A0層 | A層の特徴 | A層との境界 B層の特徴 |
BA型:乾性(細粒状型) 尖った尾根など風・日照で強く乾燥する面。 | L層があり、FH層が厚い。外生菌根の菌糸に富み、菌糸網層(M層)がみられる。 | 黒褐色で薄く堅い。HA層やM層がみられることが多い。細粒状構造が発達。 | 判〜明。 堅く乾燥。深くまで細粒状。一部に堅果状。 |
BD型:適潤性 凹型斜面の中腹、緩斜・平坦面など排水良好な面。 | L層は季節的にあり、FH層は発達しない。 | 黒褐色で腐植が浸透し厚く軟らか、上部に団粒状、下部は塊状。 | 漸。 やや軟らか。弱度の塊状。 |
よって、間違った文章です。
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