国家公務員試験(総合職・大卒)

【過去問解説】2019年国家公務員採用総合職試験(大卒)森林・自然環境(多肢選択式)試験問題【No.17】

2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。

問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。

なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。

これは、選択問題「森林環境科学」の問題です。

タップできる目次
  1. 問題
  2. 解説

問題

【No. 17】 我が国の国有林野事業に関する記述として最も妥当なのはどれか。なお,データは,「平成30年版 森林・林業白書」による。

  1. 我が国の世界自然遺産(知床,白神山地,小笠原諸島,屋久島)の陸域の9割以上は国有林野である。国有林野事業では,遺産区域内の国有林野を「天然保護区域」に指定し,関係機関とも協力しつつこれら森林の厳格な保護・管理に努めており,一切の動植物に人為を加えることを禁じている。
  2. 平成28年度末現在,国有林野の約9割は水源かん養保安林や土砂流出防備保安林などの保安林に指定されている。国有林野事業では,国有林直轄治山事業により国有林内の荒廃地の復旧や保安林の整備などを実施しているほか,民有林内においても,大規模な荒廃地などについては,民有林直轄治山事業などにより復旧事業を実施している。
  3. 新たな森林管理システムが効率的に機能するよう,国有林野事業においても積極的に貢献していく必要がある。このため,森林共同施業団地などにおける林道の相互接続などの民有林との連携に新たに取り組むとともに,意欲と能力のある林業経営者に対し,業務が過度に集中しないよう,国有林野事業の発注を控えるような配慮を行うこととしている。
  4. 国有林野事業では,全国における多数の事業実績の統一的な分析などが可能であることから,その特性をいかし,林業の低コスト化などに向けた事業レベルでの試行を進めている。特に近年は,施工性に優れたポット苗の活用を進めるとともに,その優位性をいかして造林を伐採と分離して集中的に実施する方式の実証・普及に取り組んでいる。
  5. 国有林野事業では,地域産業の振興や住民の福祉の向上などに貢献するため,公益性の観点から,地方公共団体などが行う道路,電気・通信,ダムなどの公益的事業用の施設用地に限り,国有林野の貸付けや売払いを行っている。一方,住民による薪炭材や山菜類の採取は一部の者による営利的利用につながるため,認めていない。

解説

①の文章ですが、

世界遺産一覧表に記載された我が国の世界自然遺産は、その陸域のほぼ全域(95%)が国有林野である(資料 V -6)。国有林野事業では、遺産区域内の国有林野のほとんどを世界自然遺産の保護担保措置となっている「森林生態系保護地域」(保護林の一種)に設定し、厳格な保護・管理に努めるとともに、世界自然遺産登録地域を、関係する機関とともに管理計画等に基づき適切に保護・管理しており、外来植物の駆除や植生の回復事業、希少種保護のための巡視等を行っている。例えば、「白神(しらかみ)山地」(青森県及び秋田県)の国有林野では、世界自然遺産地域への生息範囲拡大が懸念されるシカについて、環境省と連携し、センサーカメラによるモニタリングを実施するとともに、「小笠原(おがさわら)諸島」(東京都)の国有林野では、アカギやモクマオウなど外来植物の駆除を実施し、小笠原諸島固有の森林生態系の修復に取り組んでいる。

平成29年度森林・林業白書より
平成29年度森林・林業白書より

よって、間違った文章です。

②は妥当な文章です。

国有林野には、公益的機能を発揮する上で重要な森林が多く存在し、平成28(2016)年度末現在で国有林野面積の90%に当たる685万haが水源かん養保安林や土砂流出防備保安林等の保安林に指定されている。国有林野事業では、国民の安心・安全を確保するため、自然環境保全への配慮やコストの縮減を図りながら、治山事業による荒廃地の整備や災害からの復旧、保安林の整備等を計画的に進めている。

国有林内では、集中豪雨や台風等により被災した山地の復旧整備、機能の低下した森林の整備等を推進する「国有林直轄治山事業」を行っている。

民有林内でも、大規模な山腹崩壊や地すべり等の復旧に高度な技術が必要となる箇所等では、地方公共団体からの要請を受けて、「民有林直轄治山事業」と「直轄地すべり防止事業」を行っており、平成29(2017)年度においては、15県21地区の民有林でこれらの事業を実施した。

平成29年度森林・林業白書より

③の文章ですが、

また、国有林野事業では、地域における施業集約化の取組を支援し、森林施業の低コスト化に資するため、民有林と連携することで事業の効率化や低コスト化等を図ることのできる地域においては、「森林共同施業団地」を設定し、国有林と民有林を接続する路網の整備や相互利用、連携した施業の実施、国有林材と民有林材の協調出荷等に取り組んでいる。

平成29年度森林・林業白書より

国有林野事業は、国内最大の森林を所有する事業発注者であるという特性を活かし、林業事業体への事業の発注を通じてその経営能力の向上等を促すこととしている。

具体的には、総合評価落札方式や2か年又は3か年の複数年契約、事業成績評定制度の活用等により、林業事業体の創意工夫を促進している。このほか、作業システムや路網の作設に関する現地検討会の開催により、林業事業体の能力向上や技術者の育成を支援するとともに、市町村単位での今後5年間の伐採量の公表や森林整備及び素材生産の発注情報を都道府県等と連携して公表することにより、効果的な情報発信に取り組んでいる。

平成29年度森林・林業白書より

よって、間違った文章です。

④の文章ですが、

国有林野事業では、事業発注を通じた施策の推進や全国における多数の事業実績の統一的な分析等が可能であることから、その特性を活かし、植栽本数や下刈り回数・方法の見直し、シカ防護対策の効率化等による林業の低コスト化等に向け、先駆的な技術等について各森林管理局が中心となり、地域の研究機関等と連携しつつ事業レベルでの試行を進めている。さらに、現地検討会等の開催による地域の林業関係者との情報交換や、地域ごとの地形条件や資源状況の違いに応じた低コストで効率的な作業システムの提案及び検証を行うなど、民有林における普及と定着に努めている(資料 V -8、事例 V -7)。

特に近年は、施工性に優れたコンテナ苗の活用による効率的かつ効果的な再造林手法の導入・普及等を進めるとともに、植栽適期の長さ等のコンテナ苗の優位性を活かして伐採から造林までを一体的に行う「伐採と造林の一貫作業システム(*6)」の実証・普及に取り組んでいる。

平成29年度森林・林業白書より
平成29年度森林・林業白書より

よって、間違った文章です。

⑤の文章ですが、

国有林野事業では、農林業を始めとする地域産業の振興や住民の福祉の向上等に貢献するため、地方公共団体や地元住民等に対して、国有林野の貸付けを行っている。平成28(2016)年度末現在の貸付面積は約7.4万haで、道路、電気・通信、ダム等の公用、公共用又は公益事業用の施設用地が47%、農地や採草放牧地が14%を占めている。

このうち、公益事業用の施設用地については、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づき経済産業省から発電設備の認定を受けた事業者も貸付対象としており、平成28(2016)年度末現在で約153haの貸付けを行っている。

また、国有林野の一部に、地元住民を対象として、薪炭材等の自家用林産物採取等を目的とした共同利用を認める「共用林野」を設定している。共用林野は、自家用の落葉や落枝の採取や、地域住民の共同のエネルギー源としての立木の伐採、山菜やきのこ類の採取等を行う「普通共用林野」、自家用薪炭のための原木採取を行う「薪炭共用林野」及び家畜の放牧を行う「放牧共用林野」の3つに区分される。共用林野の設定面積は、平成28(2016)年度末現在で、118万haとなっている。

さらに、国有林野のうち、地域産業の振興や住民福祉の向上等に必要な森林、苗畑及び貯木場の跡地等については、地方公共団体等への売払いを行っている。平成28(2016)年度には、ダム用地や道路用地等として、計144haの売払い等を行った。

平成29年度森林・林業白書より

よって、間違った文章です。

正答番号

2

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