2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林資源科学」の問題です。
問題
【No. 29】 我が国の森林土壌に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- ポドゾル群は,西日本を除く高山帯や亜高山帯の寒冷湿潤な地域に出現する,ポドゾル化を主要な生成因子とする強塩基性の土壌である。ポドゾル化作用の要因は,主に寒冷などの気候条件により,土壌微生物の有機物の分解作用が抑制されることにある。極めて養分が欠乏した生産力が低い土壌であり,樹木の成長速度は非常に遅いため,造林には適さない。
- 褐色森林土群は温暖・多雨の気候下で生成され,我が国では,温帯を中心に暖帯から亜寒帯や亜高山帯の一部にかけ,最も広く分布する土壌群である。(A0)-A-B-C層から構成され,溶脱や集積はほとんど認められない。褐色森林土亜群や表層グライ化褐色森林土亜群など複数の亜群がある。さらに,断面形態の相違などにより各土壌型及び亜型に細分される。
- 黒色土群は,火山山麓や準平原などで火山灰に覆われている地域に,北海道から九州まで広範囲に出現し,褐色森林土群に次いで広く分布している。この土壌群は,母材が火山灰であることが分類の条件となっており,また,土壌生成過程の期間が短いため,A層などの土層の分化が不完全である。
- 上昇斜面(凸型斜面)は,水の侵食作用が岩石の風化作用より盛んに行われるために生成される。斜面の中部から下部では土層が厚く滞水しやすいため,弱湿性褐色森林土(BE)が存在する場合が多い。尾根部は鈍頂で,乾性褐色森林土(粒状・堅果状構造型)(BB)が出現することが多い。
- 下降斜面(凹型斜面)は,水の侵食作用より岩石の風化作用が盛んに行われるために生成される。山腹上の風化砕屑物層は薄く,理学的性質が不良な適潤性褐色森林土(BD)や適潤性褐色森林土(偏乾亜型)(BD(d))が山腹斜面の上部まで存在する場合が多い。一方,斜面上部から尾根部は急峻で,乾燥しやすいために乾性褐色森林土(BA)が出現することが多い。
解説
①の文章ですが、
ポドゾル群は、温帯上部から寒帯、亜高山帯に分布する。ポドゾル化作用を受け、溶脱層と集積層をもち、強酸性でせき悪である。
ポドゾル化作用:酸性化した土壌水にCa、Mgも融解・流亡し塩基類はほとんど土壌中に残らないため、土壌は酸性に傾く。特に寒冷地では、有機物分解が進まず表層に強酸性の腐植がたまりやすく、粘土の一部が破壊されFe、Alが不安定となり土壌中を下方へ移動する。そのため、表層には灰白色、ケイ酸質の溶脱層が、下部にはFe、Aiなどの集積層ができる。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
②は妥当な文章です。
③の文章ですが、
黒色土群:厚い黒色ないし黒褐色のA層をもち、B層への推移は明、容積重は小、保水力・陽イオン交換容量は大、火山山麓や火山灰に覆われた台地に広く分布し、日本に2番目に多く分布(2割弱)する。黒色、淡黒色の2亜群がある。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
上昇斜面(凸型斜面)は、地表水や土砂の流亡が多く、斜面中・下部で土層が薄く乾燥し養分に乏しい。斜面上部に残積土がある。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
下降斜面(凹型斜面)は,斜面下部に水分や土砂が集まりやすく、土層が厚く養水分に富んでいる。崩積土が多い。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
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