2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林資源科学」の問題です。
問題
【No. 26】 我が国におけるほ乳類による林業への被害に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 野ネズミ類,ノウサギ類は森林を生息場所とするため,第二次世界大戦後の針葉樹一斉造林によって被害が増加した。特に幼齢林における稚幼樹の樹幹の切断や皮剥ぎの被害が甚大であり,現在でも人工林のほ乳類による被害の大部分を占めている。
- カモシカによる被害は,野ネズミ類やノウサギ類による被害より遅れて増加した。これは拡大造林によって植林された人工林が成長し,カモシカに好適な環境が増加したことによる。主に樹皮を食害し,角こすりによる被害も見られる。また,ニホンジカに比べると高い繁殖速度を持つことなどが個体数の制御を困難にしている。
- ニホンジカによる被害は,天然林の伐採による草地面積の増加と共に増加した。枝葉や樹皮の食害,角こすりによる被害などがあらゆる林齢の造林地や天然林で発生し,重大な問題となっている。ただし,なわばりを持つため生息密度には限界がある。
- ツキノワグマによるクマ剥ぎは,樹皮を剥ぎ取って形成層を食害する行為で,環状に剥がされれば枯死し,枯死しなくても材の変色や腐れを生じて経済的価値を損なう。大径木の根元付近などの材価の高い部分で被害が多く,局所的に集中した深刻な被害をもたらす傾向がある。
- 2016年度のほ乳類による森林被害面積は,1965年度以降で最も大きかった。山間部の過疎化に伴う里山の管理放棄や,暖冬による積雪の減少などの様々な要因によって,ほ乳類による森林被害面積は,野ネズミ類やノウサギ類による被害を中心に拡大傾向にある。
解説
①の文章ですが、
ノネズミによる主な被害は、植栽木の樹皮及び地下の根等の摂食です。食害により、幼齢木・壮齢木問わず枯死に至ることがあり、特に北海道におけるエゾヤチネズミは数年おきに大発生し、大きな被害を引き起こしています。
ノウサギによる主な被害は、幼齢木の枝葉及び植栽木の樹皮の摂食です。特に幼齢木への食害については主軸の切断を伴うため、成長を著しく阻害されます。
また、ノネズミとノウサギによる森林被害面積はそれほど大きくありません。
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
カモシカによる主な被害は、幼齢木の枝葉の摂食ですが、一部地域ではほかに壮齢木への角こすりも発生しています。食害された幼齢木は、枯死したり、成長を著しく阻害されます。
また、カモシカは基本的に天然林に生息し、近年個体数が減少したため、絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)に登録されています。
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
シカによる被害は、森林被害全体の約7割を占め、深刻な状況となっています。シカによる森林被害は、これまでは造林地における植栽木の食害が主でしたが、近年では成林したヒノキ等の樹皮の食害も目立つようになってきています。このような被害の発生は、林業生産コストの増大や森林所有者の経営意欲の低下を招きかねません。また、シカの生息密度が著しく高い地域の森林においては、食害によってシカの口の届く高さの枝葉や下層植生がほとんど消失している場合もあり、このような場所においては、土壌の流出等による森林の有する公益的機能の発揮に影響を与える恐れもあります。
よって、間違った文章です。
④は妥当な文章です。
⑤の文章ですが、
近年、野生鳥獣による森林被害面積は減少傾向にあるものの、野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカ等の野生鳥獣による森林被害は依然として深刻な状況にある。平成28(2016)年度の野生鳥獣による森林被害面積は、全国で約7千haとなっており、このうち、シカによる被害が約8割を占めている(資料 II -23)。
平成29年度森林・林業白書より
よって、間違った文章です。
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