2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用一般職試験(大卒程度)の専門試験【林学】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は全部で40題で、解答時間は3時間です。
これは、40題のうちの38問目の問題です。
問題
【No. 38】 斜面上の侵食とそれを防ぐための緑化工に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 地表面の侵食が活発化するとガリ侵食が発生し,更にそれが進行するとリル侵食となる。これらの現象には雨滴の作用による地表面の浸透能の増加が関わっている。
- 侵食土砂量の予測式として USLE(Universal Soil Loss Equation)が用いられる。この式は自然林における調査結果を基に開発されたものであるため,樹木の密度を考慮できる一方で,土壌保全対策の効果を考慮することができない。
- 森林による侵食軽減機能としては,植生による雨滴エネルギーの軽減,リター層などによる地表流速の減殺,地温の安定化,根系による土壌の緊縛などの機能が挙げられる。
- 緑化工で導入される草本種は夏から秋にかけての成育が重要であるため,冬季に成育する草本種の使用は避ける。また,将来的な木本種の成長を妨げないために,多年生よりも一年生が望ましい。
- 緑化工で導入される木本種はゆっくりと着実に成長する樹種が用いられる。このため,成長の早いヤマハンノキやヤシャブシなどのハンノキ属の樹種は緑化工には用いられない。
解説
①の文章ですが、
リル侵食は、地表の流水による溝状の侵食で深さ30cm未満のもの(沢の源頭部など、地形的に集水するものは除く)をいい、リル侵食がさらに発達した溝状の侵食で深さ30cm以上に達したもの(沢の源頭部など地形的に集水するもの、常に流水があるものは除く)をガリ侵食といいます。
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
USLEによる侵食土砂量の予測:侵食土砂量を推定するために、これまで種々の経験式、理論式が提案されてきている。それらの中で、米国農務省土地保全局が全国約3,000ヵ所の農地における観測結果を統計処理して開発されたUSLEは世界的にも評価されて使用されてきている。この式は本来、農地における侵食土砂量の推定に用いられるものであるが、最近USLEを山地斜面や崩壊地にも適用しようとする試みがなされてきている。
森林・林業実務必携より
よって、間違った文章です。
③は妥当な文章です。
④の文章ですが、
緑化工で使用する草本類は、周囲の植生状況を考慮して、単一なものに偏らず生育期間の異なる草本を選択します。
よって、間違った文章です。
⑤の文章ですが、
緑化工で使用する植栽木としては、陽樹で成長の早いヤシャブシ、クロマツ、ヤマハンノキなどがよく用いられます。
よって、間違った文章です。
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