2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、必須問題13題のうちの11問目の問題です。
問題
【No. 11】 我が国の山地で生じる崩壊現象に関する記述A~Dのうち,妥当なもののみを挙げているのはどれか。
A.表層崩壊は豪雨時のほか,地震時でも発生する。豪雨時の場合は,雨水が集中しやすい凹型の斜面形状の地形に多く発生する傾向が強いが,地震時の場合は,凸型の斜面形状の地形にも多く発生する傾向にある。
B.表層崩壊と深層崩壊が発生しやすい降雨形態は異なるといわれている。すなわち,表層崩壊は,降雨強度が大きな集中豪雨時に発生しやすい一方,深層崩壊は,降雨継続時間が長く総雨量が多くなった場合に発生しやすい。
C.深層崩壊の発生は,特定の地質構造に関連するため,発生箇所の分布に特徴がみられ,特に,基岩の深層まで風化しやすい花崗岩地帯に集中して発生する傾向がみられる。近年では,平成30年7月豪雨において,中国地方の花崗岩地帯で深層崩壊が多発し,大きな被害が生じた。
D.深層崩壊は,移動土塊量が多いため,崩壊した土砂は流動しにくく,崩壊前の原形をとどめた状態で発生斜面上にとどまることが多い。対策として,アンカー工を用いて基岩と移動土塊を固定するなど発生源の対策や土砂災害警戒情報に基づく早めの避難など,ハード・ソフト対策を組み合わせた対策が効果的である。
- A,B
- A,D
- B,C
- B,D
- C,D
解説
○深層崩壊の発生メカニズム
- 降雨、融雪、地震などが原因。
- 降雨による場合は、短時間降雨よりも長時間降雨に影響されると言われている。(参考)総降雨量が400mmを越えると増えるとの指摘もある。
- 地形的には岩盤クリープ、円弧状クラックなど、深層崩壊が発生しやすい微地形があると言われている。
- 渓流域の集水面積が大きい、比高差が大きいなど水の力がかかりやすい地形は相対的に深層崩壊が発生しやすいと言われている。
○深層崩壊の特徴
- 移動土塊、岩塊の動きは突発的で一過性
- 移動土塊、岩塊の移動速度が大きい
- 移動土塊、岩塊は攪乱され、原型を保たない
- 表層崩壊より土砂が多く、到達距離は大きい
よって、Aは妥当な文章です。
また、Bも妥当な文章です。
Cの文章ですが、
深層崩壊は、表層崩壊に比べ発生頻度が少なく、その地域の地質や地質構造 の影響も強く受けるため、その発生機構や要因等、多くの部分が未解明です。
また一般的に花崗岩地帯ではがけ崩れと呼ばれる表層崩壊が多いです。
○深層崩壊は表層崩壊、がけ崩れ、地すべり、土石流などと何がちがうのか。
- 深層崩壊は崩壊の形態を表した言葉で、かけ崩れ・地すべり・土石流は土砂災害の形態を表した言葉である。
- 崩壊は表層崩壊と深層崩壊に分けられる(表層崩壊でないものを深層崩壊と呼んでいる)。
- 一般的にがけ崩れは、表層崩壊によるものが多く、土石流は表層崩壊によるものが多いが1997年の鹿児島県出水市の針原川の事例のように、深層崩壊に由来するものもある。また、地すべりは一般的には深層崩壊にともなって発生する現象で動きが緩慢なものが多いが、今回取り上げている深層崩壊は深層崩壊のうち、動きが速いものを対象としている。
平成30年7月豪雨では、中国地方の花崗岩地帯で斜面崩壊が多く発生しました。
よって間違いです。
Dの文章ですが、
対策として,アンカー工を用いて基岩と移動土塊を固定するなど発生源の対策や土砂災害警戒情報に基づく早めの避難などが効果があるのは、一般的に表層崩壊です。
よって間違いです。
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