2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、必須問題13題のうちの7問目の問題です。
問題
【No. 7】 我が国における森林保全に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 保安林とは,特定の公益目的を達成するため,農林水産大臣によって指定される森林である。保安林では,土石の採掘などが制限され許可が必要となるだけでなく,立木の伐採については一切禁止されるなど厳しく管理されている。また,保安林に指定されている森林は国有林のみである。
- 保安林の実面積*は平成11年から平成28年にかけて増加している。また,平成29年3月末現在において,保安林の種類別指定面積が最も大きいのは水源かん養保安林であり,次に大きいのは土砂流出防備保安林である。
- 平成29年7月九州北部豪雨においては,主に扇状地部の広葉樹が流木化し,下流に被害をもたらした一方で,スギはほとんど流木化しなかった。このことを踏まえ,国は,流木化する可能性の高い箇所においては,広葉樹を伐採し,針葉樹へ転換するなどの対策を行うこととしている。
- 砂防堰堤は不透過型と透過型に分けられる。透過型は土石流に含まれる巨礫の捕捉を目的としており,流木のほとんどは透過部から流出してしまうため,一般に,不透過型の方が透過型よりも流木の捕捉効果が高い。
- 平成28年度の我が国における森林病害虫被害量(材積)のうち,最大となっているのはナラ枯れ被害量である。ナラ枯れは,カシノナガキクイムシなどによって運ばれた線虫がナラ・カシ類の樹体内に侵入することにより樹木を枯死させる現象である。
* それぞれの種別における指定面積から,上位の種別に兼種指定された面積を除いた面積を表す。
解説
①の文章ですが、
- 保安林の指定及び解除の権限は、民有林のうち国土保全の根幹となる重要流域にある流域保全のための保安林(水源かん養保安林、土砂流出防備保安林及び土砂崩壊防備保安林)及び国有林の保安林にあっては農林水産大臣、その他の民有保安林にあっては都道府県知事となっています
- 立木の伐採は都道府県知事の許可があれば可能です
②の文章ですが、
保安林の実面積は以下のとおりです。
また、平成29年3月末現在において,保安林の種類別指定面積は以下のとおりです。
よって妥当な文章です。
③の文章ですが、
林野庁では、九州北部豪雨等による流木災害の発生を受けて、緊急的・集中的に流木対策が必要な地区(全国約1,200地区)を抽出し、平成32年度までを目途に、以下の流木対策を推進することとしています。
- 流木捕捉式治山ダムの設置
- 間伐等による根系等の発達促進
- 流木化する可能性の高い流路部の立木の伐採 等
④の文章ですが、
砂防堰堤は不透過型と透過型に分けられますが、「透過型の砂防堰堤は土石流に含まれる巨礫の捕捉を目的としており,流木のほとんどは透過部から流出してしまうため,一般に,不透過型の方が透過型よりも流木の捕捉効果が高い」といったことはありません。
⑤の文章ですが、
平成28年度の我が国における森林病害虫被害量(材積)のうち,最大となっているのはナラ枯れ被害ではなく「松くい虫被害」です。
2