2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分に ついては採点されません。
これは、必須問題13題のうちの2問目の問題です。
問題
植物の発生や環境応答,分類などに関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 裸子植物のイチョウやソテツの受精では,雨の日など周囲に水があるときに精子が水中を泳いで造卵器に達し,その中で受精と胚発生が進行する。被子植物の受精では,裸子植物とは異なり,受精が行われなくても胚のうがそのまま胚乳になる。
- 緑藻類は,クロロフィルaとbを持ち,通常,緑色に見える。緑藻類には,クラミドモナスやクロレラのように生涯にわたって細胞群体を形成しているものや,アオサやコンブのように一生の多くの時間を多細胞で生活するものがある。
- 環境の変化に対する植物の反応の例で,オジギソウの葉に触れると,小葉が閉じ葉柄が垂れ下がる現象が観察できる。これを接触傾性という。また,チューリップやクロッカスの花が温度の上昇とともに開くようになるのは温度傾性である。
- 培地にサイトカイニンとオーキシンを加えニンジンなどの植物の組織片を培養すると,細胞が分裂し分化したカルスが得られる。このとき,オーキシンに対するサイトカイニンの量比が高いとカルスは不定根を分化する。また,このカルスを植物ホルモンを含まない培地に移植すると,通常,不定芽と呼ばれる細胞集団が形成される。
- 病原菌が植物体内に侵入すると,病原菌の構成成分が細胞膜にある受容体で受容され,ジャスモン酸と呼ばれる抗菌物質や,リグニンの合成が誘導される。また,病原体の毒素によって感染部位の近傍の細胞が殺されてしまう過敏感反応も知られている。
解説
①の文章ですが、
イチョウとソテツの精子はシダ植物のように水の助けを借りなくても受精できます。
また、被子植物も、受精が行われなければ胚のうは胚乳になりません。
なので、全文が間違いです。
②の文章ですが、
クラミドモナス・クロレラは単細胞生物のため細胞群体は形成しません。
アオサは多細胞ですが、コンブはそもそも緑藻類ではなく褐藻類です。
なので、「緑藻類には,クラミドモナスやクロレラのように生涯にわたって細胞群体を形成しているものや,アオサやコンブのように一生の多くの時間を多細胞で生活するものがある。」の部分が間違いです。
④の文章は、
なので、「細胞が分裂し分化したカルス」の部分が間違いです。
また、カルスが形成された後、培地中のオーキシンに対するサイトカイニンの量比が低いとカルスは不定根を分化し、逆にサイトカイニンの濃度が高いときは不定芽が生じます。
なので、「このとき,オーキシンに対するサイトカイニンの量比が高いとカルスは不定根を分化する。また,このカルスを植物ホルモンを含まない培地に移植すると,通常,不定芽と呼ばれる細胞集団が形成される。」の部分も間違いです。
⑤の文章は、
過敏感細胞死は、感染を受けた局部の細胞が病原体を道連れに自発的に細胞死するものです。
なので、「病原体の毒素によって感染部位の近傍の細胞が殺されてしまう過過敏反応も知られている」の部分が間違いです。
つまり、③の文章が最も妥当な文章です。
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