2019年度(H31、R1年度)の国家公務員採用総合職試験(大卒程度)の専門試験【森林・自然環境】の多肢選択式試験問題の過去問解説です。
問題は121題あります。
問題は必須問題13題(No.1~No.13)と選択問題12科目108 題(No.14~No.121)に分かれています。選択問題については任意の3科目(27題)を選択し,必須問題と合計して40題を解答します。
なお,選択問題については,3科目を超えて解答しても超えた分については採点されません。
これは、選択問題「森林環境科学」の問題です。
問題
【No. 22】 森林の階層構造に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- 森林の階層構造は常に画然と区分可能な幾つかの階層から成る。階層は巨大高木層,高木層,亜高木層,低木層,草本層,コケ植物層に区分されるが,全ての階層が揃っているとは限らない。一般に,森林の発達段階が進むほど,種間競争によって種数が減少することから,階層構造は単純になる。
- 高木層を構成する樹木は,森林独特の相観や環境をつくり出す重要な役割を持ち,森林の骨格を形成する。樹種にかかわらず,高木層から供給された種子は森林内で発芽して成長できるため,高木層の優占種は,亜高木層や低木層においても常に優占種となる。
- 森林の階層構造の複雑さを示す指標として FHD(Foliage Height Diversity)がある。これは森林の各階層に分布する葉群の密度を基に,シンプソンの多様度指数と同様の計算式によって求められる数値である。FHDが最も高い値を示す森林とは,階層ごとの葉群密度が低い値から高い値まで多様な値を示す森林である。
- 熱帯多雨林は最も大規模な階層構造を持つ森林である。熱帯多雨林では常に高木層の更に上に巨大高木層と呼ばれる樹高 70 m にも達する閉鎖林冠層が存在する。さらに,低木層や草本層の発達も著しく,全階層にわたって極めて多様性が高い。
- 階層構造の発達した森林では,様々な樹種,サイズ,生態的特性を持った樹木が共存している。その結果,生活空間や餌資源を含む環境条件の多様化が生じ,森林性の生物に多様なニッチを提供することができる。
解説
①の文章ですが、
森林の階層構造は常に画然と区分可能ではありません。
また、一般に,森林の発達段階が進むほど,種数が増加する傾向にあります。
よって、間違った文章です。
②の文章ですが、
階層構造が存在する森林においては、上の層から段階的に照度が減少していくため、高木層から供給された種子は発芽に必要な光が足りずに成長できないことも多いです。
そのため,一般に階層ごとに優占種は異なります。
よって、間違った文章です。
③の文章ですが、
FHD(群葉高多様度、葉群階層多様度)は、樹林の垂直構造を表す指数で、種の多様性を示すShannon(シャノン)指数と同じ式で表されます。
この値が高いということは、階層構造がよく発達しているということを示します。
よって、間違った文章です。
④の文章ですが、
熱帯多雨林では、発達した高木層や巨大高木層により日照が遮られ、低木層や草本層は発達しづらくなっています。
よって、間違った文章です。
⑤は妥当な文章です。
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